これからキッチンカーを開業しようと考えている皆さん、こんにちは。

東京肉骨茶のオーナーの伊藤です。

キッチンカーと聞くと、カラフルなスムージーや、行列のできる生ドーナツ、見た目も可愛いフルーツ大福といった、華やかでおしゃれなメニューを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

「流行りのメニューなら、きっとお客さんがたくさん来てくれるはずだ」…そんな風に考える気持ちもよく分かります。

しかし、本当にそうでしょうか。

今回は、流行りものの裏に潜むリスクと、長くビジネスを続けるために本当に大切なことについて、私の経験からお話ししたいと思います。

流行りものは、あっという間に「飽きられていく」という現実

「地方のド田舎で、流行りのメニューを次々に変えていくフランチャイズが当たっている」という話を聞いたことがあります。

今はスムージー、飽きたらフルーツ大福、その次は…と、常に目新しさを提供し続ける戦略です。

確かに、メニューが乏しい地域では、一時的に「物珍しさ」で人は集まるでしょう。

しかし、忘れてはならないのは、流行りものは必ず飽きられるということです。

タピオカブームのブームも3年ほどで下火になった印象です。

私自身、鳴り物入りでオープンしたフルーツ大福店が、あっという間に閉店していくのを何度も見てきました。

流行りものとは、いわば「水物」。

その波に乗って一時的に儲けることはできても、それに頼り切った商売は、波が引くと同時にお客様も去ってしまう、非常に怖いビジネスモデルなのです。

また、「イベント出店なら、一見客相手だから流行りものでも良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、ここにも大きなハードルがあります。スムージーやアイスクリームといったメニューは、一つのイベントに何台も出店させるわけにはいきません。

主催者側が全体のバランスを考えるため、同業のキッチンカーとの間で熾烈な出店枠の奪い合いが発生するのです。

そもそもイベント会場に「入れるかどうか」という高い壁があることも、知っておくべきでしょう。

あなたのメニューは「ご褒美」ですか?それとも「日常」ですか?

では、なぜ流行りものは長続きしにくいのでしょうか。

それは、お客様にとっての「必要性」が低いからです。

例えばフルーツ大福は、美味しいですが「自分へのご褒美」としてたまに買うものでしょう。毎日ご褒美を食べる人はいませんよね。

スムージーも、健康に良いかもしれませんが、真冬の寒い日にキッチンカーで買って飲もうと思う人は少ないでしょう。

このように、流行りものの多くは、季節・時間・場所に大きく左右され、生活の必需品ではありません

一方で、私たちが提供しているようなランチメニューは、お客様の「お昼ご飯」という日常の選択肢の中に入っています。

「今日は何を食べようかな」と考えた時に、選んでもらえる可能性がある。

たとえ毎日選ばれなくても、その土俵に上がれることが決定的に違うのです。

一見しておしゃれなもの、可愛いものは魅力的です。

しかし、お客様の日常に寄り添い、「体にいいから、週に一度は食べようかな」と思っていただけるような、飽きのこない味と価値を提供し続けること

それこそが、常連さんを増やし、安定したビジネスを築くための鍵となります。

キッチンカーは流行りものには向きません

「流行っているから行く」というのが、多くの人の行動心理です。

人気ラーメン店に行列ができるのは、「みんなが美味しいと言っているから」という安心感が大きいから。これは強力な集客力になります。

しかし、キッチンカーで流行りものを追う場合、別の問題が浮上します。

そもそもキッチンカーは店舗と違って出店場所や時間が日によって変わることが多く、お客様からすれば『食べたい』と思った時にすぐに行けるわけではありません。

「今日あそこに行けば食べられる」という確信が持てず、探しているうちに熱が冷めてしまうということにも成り兼ねないのです。

これからキッチンカーを始めるあなたへ

SNS映えする可愛いメニューは、確かに魅力的です。

しかし、その裏側にある厳しさを知っておいてください。

誰かが成功しているのを見て、「自分にもできそうだ」と安易に飛びつくのは危険です。

本当に大切なのは、流行を追いかけることではありません。

お客様の日常に寄り添い、飽きさせず、長く愛される味と価値を提供できるか。

そして、あなただけの「希少性」をどう作り出していくか。

これからキッチンカーという夢に挑戦する皆さんが、一過性の流行に惑わされることなく、着実にファンを増やし、長く愛されるお店を育てていかれることを、心から応援しています。