こんにちは。「東京肉骨茶(バクテー)」店主の伊藤です。
本日は、当店の看板メニュー、東京肉骨茶(バクテー)」のニンニクについて、少しお話しさせていただければと思います。

「本場の味」を知らない友人たちの率直な意見
この料理を日本で皆様にご提供するにあたり、私なりに様々な試行錯誤を重ねました。
目指したのは、単にシンガポールの著名な味をそのまま日本に持ち込むのではなく、日本人の味覚に寄り添う形で「融合」させること。
本場の肉骨茶(バクテー)を食べた経験がない方々に、いかに心から「美味しい」と感じていただけるか。それが、私にとって最も重要な課題でした。
ですから、味を開発する際には、周囲の友人たちにも多くの意見をもらいました。
試食に協力してくれた友人の中に、シンガポールで肉骨茶(バクテー)を経験した者はいませんでしたが、振り返ると、それがかえって良い結果に繋がったのかもしれません。 「本場の味」という先入観にとらわれず、日本のお客様としての率直な意見を聞くことができたからです。
ニンニクの風味と「臭い」のジレンマ
そして、開発過程で最も頭を悩ませたのが、ニンニクの扱いです。
肉骨茶(バクテー)には、粒のままのニンニクが風味の要として欠かせません。
しかし、東京でランチに人が集まるところといえばビジネス街です。
「仕事中のサラリーマンやOLが、ランチタイムにニンニクを食べるだろうか?」
「午後のご予定を考えると、臭いが気になるのではないか?」
でも、ニンニク無しでは、肉骨茶(バクテー)の味にはなりません。
食べてくれる人は少ないかもしれないと、ひそかに覚悟していました。
予想外の反響「もっとニンニクを!」
ところが、実際に東京のビジネス街で東京肉骨茶(バクテー)の提供を開始すると、お客様の反応は私の予想とは全く異なっていました。
「もっとニンニクを入れてほしい」というご要望が数多くあったのです!
「マスクをしているから大丈夫です」と言われる方や、「気にしません」と言われる方。また、「ニンニクを抜きましょうか?」とお声がけすると「いや、それで味が変わってしまうのは困ります」と、明確にニンニク入りを希望されるお客様もいらっしゃいました。
特にリピーターのお客様は、東京肉骨茶(バクテー)の味、そのものを求めて足を運んでくださるので、「ニンニクを抜くことで本来の味が損なわれるのなら、絶対に入れてほしい」とお考えのようでした。
出店した東京の丸の内には、ティファニーなどの一流ブランドなどもすぐ傍にあります。
そうしたハイブランドに訪れるお客様と日々接するお仕事をされている方々までもが、「全く問題ありませんよ」とランチに訪れてくださっているのは、この上ない喜びです。
なぜ臭いが気にならない?「じっくり煮込む」調理法
では、なぜ東京肉骨茶(バクテー)のニンニクは、それほど臭いが気にならないのでしょうか。
それは、調理法にあると考えています。
スープと共に非常に長い時間をかけて、ニンニクが柔らかくなるまでじっくりと煮込む。 この過程で、ニンニク特有の強い香りが穏やかになり、代わりに豊かな旨味成分だけがスープに溶け出していくのです。
食べていただければ分かりますが、煮込まれたニンニクは、ホクホクとした優しい食感になります。これは、焼いたり炒めたりしたニンニクや、餃子などに使われる生に近い状態のニンニクとは、異なるものと言えるでしょう。
(以前、あるお店でニンニクを大量に炒めた麺料理をいただいた際、もちろん美味しかったものの、後々まで強い香りが残った記憶があります。東京肉骨茶(バクテー)のニンニクは、それとは全くの別物とお考えいただければと思います)
「煮込みニンニク」は臭いにくい、本場でも同様の認識
この「煮込んだニンニクは臭いが残りにくい」という点は、本場シンガポールのバクテー店でも同様のようです。
多くの店でニンニクは追加自由ですが、食後の臭いを気にされる方は少ないと聞きます。日本では、ニンニクは焼く、揚げる、あるいは薬味として用いるのが主流で、煮込み料理でこのように粒のまま主役級として提供される機会は、あまり多くないのかもしれませんね。
ニンニクの臭いを気にせず、心ゆくまで味わってほしい
なぜ煮込むことで臭いが強くならないのか、その詳細な化学的理由は専門的な分析が必要かもしれませんが、一つ、私が自信を持ってお伝えできることがあります。 それは、「東京肉骨茶(バクテー)」においては、ニンニクを安心してお楽しみいただけるということです。
これまでニンニクの臭いが気になって肉骨茶(バクテー)を敬遠されていたという方も、ぜひ一度、東京肉骨茶(バクテー)試してみてください。
その滋味深い味わいと、ニンニクの穏やかな風味に、きっとご満足いただけると信じています。
皆様のご来訪を、心よりお待ちしております。