キッチンカーの開業を検討されている皆さん、こんにちは。
東京肉骨茶(とうきょうばくてー)創業者の伊藤です。「キッチンカーって、実は廃業率が高いって聞くのだけれど……」相談に来られる方から、そんなご相談をよく受けます。
そこで今回は、なぜキッチンカーの廃業率が高いと言われるのか、その「現実」と、失敗を避けるために「絶対に外せないポイント」についてお話しします。
飲食業界とキッチンカーの生存率
まず知っておいていただきたいのは、キッチンカーを含む「飲食業」は、全産業の中でも特に開業と廃業のサイクルが早いビジネスであるという事実です。
〇飲食業全体の生存率
中小企業庁の統計によると、飲食業は全業種の中で最も廃業率が高い業態の一つです。
- 飲食業の1年以内の廃業率・・・約34.5%
- 飲食業の10年後の生存率・・・約10%前後
出典:中小企業庁:2023年度版「中小企業白書」、日本政策金融公庫:「2022年度新規開業実態調査」より
このデータが示す通り、10店舗オープンしても10年後には1店舗しか残らない。これが飲食ビジネスの厳しい標準値です。
〇キッチンカー特有の廃業率
では、キッチンカーに絞った場合はどうでしょうか。業界の調査データを総合すると、さらに具体的な傾向が見えてきます。
- 開業1年以内の廃業率:約30%
- 開業3年以内の廃業率:約70%
出典:エムズカンパニー「キッチンカー運営開業1年以内の廃業率調査(2019)」、一般社団法人日本移動販売協会等の業界推計に基づく
キッチンカーは10人に3人が1年以内に姿を消し、3年後には3人しか残らないという、非常にシビアな世界なのです。
なぜ「始めやすい」のに「続けにくい」のか?
これほど廃業率が高い最大の理由は、皮肉にもキッチンカーのメリットである「参入障壁の低さ」にあります。
固定店舗は数千万円の投資が必要ですが、キッチンカーは数百万円、あるいはレンタルならもっと安く始められます。
この手軽さが「十分な事業計画のないままの開業」を招き、売上が伸び悩んだ際に「車を売ればいい」という「諦めやすさ」に繋がってしまうのです。
「美味しい」だけでは勝てない~失敗する人が陥るミスマッチ
多くの廃業事例を見てきて痛感するのは、「味の良さ」と「商売の成功」は必ずしも一致しないということです。
特に、料理に自信がある人ほど陥りやすい罠があります。
例えば、あるカフェ店主が「自慢の絶品サンドイッチ」を引っ提げてキッチンカーを始めたとします。しかし、出店したのが「ガテン系の職人さんやハードワークの会社員が集まるビジネス街」だったらどうでしょうか。
お客さんの本音=「午後のために、安くて、早くて、ガッツリ腹持ちが良いものが食べたい」
店主のこだわり=「厳選素材を使った、繊細で軽やかなサンドイッチ」
この場合、サンドイッチがどれほど美味しくても売れません。
お客さんは「今日はこれじゃない」と素通りします。
これを「客が味をわかっていない」と片付けるのは間違いです。
現場=出店場所のニーズと、提供メニューの特性が合っていない「マーケティングの失敗」なのです。
キッチンカーの「こだわり」は、なかなか伝わりにくい
キッチンカーは、店舗と違ってじっくりメニューを検討したり、説明を聞いてもらえる時間はほとんどありません。
見比べて「あそこのキッチンカーのメニューがよかった」と思っても、歩いて戻るまでが遠いですからね。
また、キッチンカーは外なので、寒かったり、暑かったりする中で、説明なんて聞いてるのも嫌になります。
「30種類のスパイスを使い、2日仕込んだ」と言っても、看板や見た目で瞬時に価値が伝わらなければ、近くの「安くて大盛りのカレー」に負けてしまいます。
自分のこだわりが独りよがりになり、現場から浮いてしまうことが、廃業への第一歩となりやすいのです。
「3ヶ月の壁」を乗り越えるための戦略
廃業率が最も高い1年目を生き残るためには、精神論ではない戦略が必要です。それには、まず最初の3か月です。
1.最初の5回で「顔」になる
キッチンカーの集客は、一度の出店で決まるものではありません。
私の経験上、同じ場所に週1回出店する場合、お客さんに認知され、リピーターがつくまでに最低でも5回(約1ヶ月強)はかかります。
最初から行列ができることはまずありません。
そこで「ここはダメだ」と場所を転々としてしまうと、いつまでもファンが定着せず、売上が安定しない負のスパイラルに陥ります。
ですから、出店場所は3カ月を目安に、移動するかを検討するようにしましょう。
2.資金的な余裕が「折れない心」を作る
売上が上がらない焦りは、サービスの質や表情に必ず現れます。
「今月売れないと生活できない」という状態ではなく、「最初の3ヶ月は赤字でも食いつなげる」だけの余裕を持って始めることが、冷静にメニュー調整や販促を行うためには絶対必要です。
3 リスクを最小限に抑えるための準備をする
キッチンカーは、店舗型に比べれば初期投資が少なく、リスクを抑えられるビジネスです。しかし、その「低リスク」を「無準備」と勘違いしてはいけません。
たとえばオペレーションの検討はどうでしょう。
1つのメニューを提供するのに何分かかっていますか?
補充商品はすぐに手の届くところに置いてありますか?
また、提供するメニューはどうでしょう。
もし「自分のメニューが本当に現場で勝てるのか」という不安があるなら、すでに成功実績のあるモデル、例えばフランチャイズのような仕組みを検討するのも一つの手です。
フランチャイズであれば、検討済みの効率的なオペレーションが提供されますし、提供メニューも「どこで、誰に、いくらで売れるか」が明確です。
暗中模索で始める個人開業に比べ、廃業リスクはかなり下がるはずです。
商売としてキッチンカーを捉える
キッチンカーの魅力は、自慢の料理を直接お客さんに届けられる機動力にあります。
しかし、それを「趣味」ではなく「商売」として継続させるには、客観的なデータと現場のニーズに寄り添う柔軟性が不可欠です。
まずは「3ヶ月、同じ場所で、ターゲットを絞り込んでやり抜く」。
このシンプルな一歩を、しっかりとした準備とともに踏み出してみてください。
それがキッチンカーを長く続け、成功するカギになります。
ぜひ、キッチンカーの楽しさを、体験してほしいですね。







