こんにちは。東京肉骨茶(バクテー)創業者の伊藤です。

「いつか自分のキッチンカーを持ちたい」

「自慢の料理でたくさんの人を喜ばせたい」

そんな熱い想いを胸に、キッチンカービジネスの世界へ飛び込もうとしている方はたくさんいらっしゃいます。

しかし、厳しい現実をお伝えすると、手軽に始められるイメージとは裏腹に、開業して間もなく静かに撤退していくお店が多いのも事実です。

「夢だったお洒落なカフェご飯を引っさげて開業したものの、全く売れなかった」

「勢いでスタートしたけれど、思うような売上にならず、数ヶ月で資金が底をついてしまった」

……そんな失敗の声をよく耳にします。

なぜ、美味しいものを作っているつもりなのに失敗してしまうのか?

今回は、これからキッチンカーを始めたいと考えている皆さんへ向けて、「キッチンカーで失敗する人が陥りがちな決定的な共通点」をお話しします。

失敗要因①:「自分のメニュー」と「現場の客層」のミスマッチ

キッチンカーがうまくいかない最大の原因は、「自分が提供したいメニュー」と「出店場所に集まるお客さんのニーズや雰囲気」がズレていることです。

極端な例を挙げましょう。

どれだけ絶品の「ガッツリ唐揚げ弁当」が作れたとしても、若者や観光客が食べ歩きスイーツを目的に集まるようなトレンドストリートに出して売れるでしょうか?

 どんなに人通りが多くても、ターゲットが違えば1食も売れません。

「人がたくさん集まる場所=売れる場所」ではないのです。

 「その場所にいる人たちが、今、その瞬間に何を食べたいと思っているか?」

ここをしっかり分析せず、「自分が作りたいもの」「自分が得意なもの」だけを一方的に押し出してしまう人は、ほぼ確実に失敗してしまいます。

失敗要因②:デベロッパーに選ばれない「ありきたりなメニュー」で挑む甘さ

「普通の唐揚げ」「普通の焼きそば」「普通のたこ焼き」

……こうしたどこにでもあるメニューで参入しようとするのも、失敗する人の典型例です。

今はコンビニでも温かくて美味しいものが手軽に安く買える時代。

そんな中で、わざわざキッチンカーに並んで買ってもらうためには、「そこでしか食べられない明確な理由」が必要です。

特に、都市部をはじめ多くの優良な出店スペースはデベロッパー(マッチング事業者)が管理しています。

彼らは同じ現場でメニューが競合するのを避けるため、「ありきたりなメニューを出す新規のキッチンカー」をそもそも選んでくれません。

実績のない初心者が「普通の唐揚げ弁当です」と手を挙げても、すでに安定して売れている既存店がいれば、出店のチャンスすらもらえないのです。

地方であれば、スーパーやホームセンター、道の駅など自分で直接交渉して開拓できる場所もありますが、ここでも油断は禁物です。

特に道の駅などは地元の名産品が溢れているため、ただの焼きそばを出しても素通りされてしまいます。

そこで、たとえば

「唐揚げでも、他では絶対に味わえない極上の特製タルタルソースをかける」

「道の駅で出すなら、特定の契約農家から仕入れた最高糖度の完熟バナナを使った濃厚スムージー」

このように、「デベロッパーや土地の管理者に『これなら売れる』と認識してもらえる尖った強み」が大事になります。

安易なメニュー設定は出店先を勝ち取れず、結果として食材ロスばかりが増えて廃業へと追い込まれてしまいます。

失敗要因③:並んだキッチンカーの中で「選ばれる競争」を意識していない

念願叶ってデベロッパーに選ばれ、好立地に出店できたとしても、本当の勝負はそこから始まります。

例えば、人気スポットに5台のキッチンカーが並んで出店しているとします。

この5台は、すでにデベロッパーから「売れる」とお墨付きをもらい、メニューのジャンルが被らないよう厳選された実力派ばかりです。

すでに実績があり、固定ファンを抱えている強豪店もいます。

つまり、出店できた瞬間から、「同じ現場に並ぶキッチンカー同士で、今日のお客さんの胃袋を奪い合う熾烈な競争」の中に放り込まれるのです。

その並びの中で、あなたのお店は本当にお客さんに選ばれるメニュー・見せ方になっているでしょうか?

「他のお店はお肉系だから、今日はあっさりしたものが食べたい人を確実に惹きつけられているか」

「パッと見で食欲をそそる看板や盛り付けになっているか」といった工夫はもちろん、最終的にお客さんの選択を決定づけるのは「店主の人柄やコミュニケーション」です。

常連さんの顔を覚えて「いつもありがとうございます!」と声をかける。

ちょっとした気配りができる。

キッチンカーはお客さんとの距離が非常に近いビジネスだからこそ、無愛想で黙々と料理を渡すだけの「自動販売機のような接客」をしていると、ライバルのキッチンカーにお客さんをごっそり奪われてしまいます。

同じ現場に出ている競合の中で、「味・メニューの独自性・そしてサービス全体」を通じて選ばれ続けること。

この競争意識が抜け落ちていると、せっかく獲得した出店場所でも生き残ることはできません。

チャンスを広げるヒント:「時間帯の固定観念」を疑ってみる

キッチンカーというと、「ランチ営業」や「休日のイベント」を思い浮かべる方が多いかもしれません。安全面などの理由から夜間の営業スペースは限られますが、ランチの枠はすでにライバルでいっぱいです。

そこでぜひ目を向けてほしいのが、「朝(モーニング)」の需要です。

出勤前にコンビニでコーヒーを買うビジネスマンは全国にたくさんいます。駅やオフィス街へと続く導線上のちょっとしたスペースで、焼きたてのホットドッグと淹れたてのコーヒーをサッと提供する。あるいは、少し落ち着いた10時前後のブランチ需要に合わせた軽食を用意してみる。

「キッチンカー=昼かイベント」という固定観念にとらわれず、朝のスキマ需要や場所の特性や営業の仕方を柔軟に捉えることも、成功への大きな糸口になると思いますよ。

最後に

キッチンカーは、実店舗を構えるよりも手軽に始められるように見えます。 しかし、

  1. 「現場の客層に合わせたメニュー設定」
  2. 「デベロッパーに選ばれる独自の強み」
  3. 「出店したライバル車の中で選ばれ続ける工夫と接客」

このどれか一つでも欠けてしまえば、生き残るのは決して簡単ではありません。

まずは「誰に、どんな価値を届けたいのか」を徹底的に突き詰めること。

そして、出店したい現場の空気感を自分の目で確かめること。

安易なスタートを切るのではなく、しっかりと戦略を練って、お客さんに長く愛され続ける素敵なキッチンカーを作り上げてください。

皆さんの挑戦を心から応援しています!